未来事業ストラテジスト 市村幸士|自動車流通を20年見て、つなぐ人

UcarPAC株式会社 未来事業ストラテジストの市村幸士

著者:市村 幸士/未来事業ストラテジスト
監修:ユーカーパック事業推進室

自動車流通業界歴21年。整備・解体・部品流通・海外販売を経て、現在はユーカーパックでマーケティング、事業企画、プロダクト、データ活用を担当。クルマを売りたい人と必要としている人をつなぐ流通について、現場経験と一次情報をもとに発信している。

クルマは、売った瞬間にその役目を終えるわけではない。

買取店へ渡り、オークションに流れ、中古車として次のオーナーへ届くこともあれば、部品として再び使われることもある。国内ではなく、海外で必要とされることもある。

一台のクルマの向こう側には、私たちが普段目にすることのない大きな「流通」がある。

ユーカーパックで「未来事業ストラテジスト」を務める市村幸士は、その流通を20年以上、さまざまな立場から見てきた。

20歳で自動車整備士としてキャリアをスタートし、自動車解体会社の営業を経て24歳で起業。廃車買取、自動車解体、中古パーツ販売、海外輸出へと事業を広げ、その後は物流DXや越境ECなど、テクノロジーを使って流通そのものを変える仕事へ進んだ。

現在はユーカーパックで、マーケティングやプロダクト、データを通じて「クルマがどう流れるか」を考えている。

一見、遠回りにも見えるキャリアだ。
しかし本人の話を聞いていくと、すべての経験が一つのテーマにつながっていた。

「本来つながるべき人と人を、どうすればもっと良くつなげられるのか」。

市村が20年以上追い続けてきた、自動車流通の話を聞いた。

「何の専門家か?」と聞かれたら“自動車流通”と答えます

整備士、廃車、解体、中古部品、海外輸出、IT、マーケティングと幅広い経験があります。

Q今、ご自身を「何の専門家」だと考えていますか?

市村

そうなんです。以前は「結局、何屋なんだろう」と自分でも思っていました(笑)。

整備だけでもないですし、買取だけでも、マーケティングだけでもない。
でも今振り返ると、ずっとやってきたのは「自動車流通」なんですよね。

クルマを直すところから始まり、ユーザーから買い取る側、解体する側、部品にして売る側、国内で販売する側、海外へ流す側まで経験しました。
今はITやデータを使って、その流れ自体をどう良くするかを考えている。

立っている場所は変わっても、見ているものはずっと同じだったんだなと最近感じています。

クルマの価格も、結局はその流通の中で、誰に情報が届き、誰が必要としているかという構造の結果として現れるものだと思っています。

原点は、「つながるべき相手が、つながっていない」という違和感

市村が最初に自動車流通の「構造」を意識したのは、20代前半だった。

自動車整備士から自動車解体会社の営業へ転職した当時、一般的な廃車は、ユーザーから車販売店へ。車販売店から解体事業者へ。という流れで動いていた。

現場に入って気づいたのは、廃車にも部品や資源としての価値が残っている一方で、それを知らないユーザーがお金を払って処分しているケースがあることだった。

Q廃車買取の事業を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

市村

自動車解体の営業をしていた時に思ったんです。
「ユーザーと解体業者が直接つながればいいんじゃないか」と。

解体業者はクルマを仕入れたい。
ユーザーはクルマを手放したい。
でも、この2者には接点がない。

廃車なんて人生で頻繁に経験することではないので、お客様は誰に頼めばいいのか分からないんですよね。
だったら、自分がその間をつなげればいい。
それが最初の起業のきっかけでした。

実際、市村は2009年、24歳で約50万円を元手に独立した。
知人から8万円でプレハブを購入して事務所にし、ホームページ、チラシ、営業まですべて自分で行った。

その小さな事業は数年後、約5,000万円を投じた1,500坪の自動車解体工場を持つまでに成長する。

しかし、市村にとって重要だったのは、会社が大きくなったことだけではない。
最初の事業で得た、

「流通には、本来つながるべきなのにつながっていない人たちがいる」

という感覚だった。
この視点は、その後のキャリアでも何度も姿を変えて現れることになる。

5,000点の中古パーツを売っても、まだ届いていない人がいた

自動車解体事業を始めると、多くの中古部品が生まれる。
市村は2014年頃からヤフオクで中古自動車部品の販売を本格化し、約1年で出品数は5,000点を超えた。

しかし、国内だけで販売していると市場には限界がある。
そこで次に目を向けたのが海外だった。

eBayを通じて海外販売を始めると、月間売上は300万円を超えるまでに成長した。

Q中古自動車部品を海外で販売してみて、国内販売との違いや気づいたことはありましたか?

市村

「必要としている人がいる場所まで情報を届けること」の重要性ですね。

日本では動きにくい部品が、海外では普通に売れる。
商品そのものが変わったわけではありません。
つながる相手が変わっただけです。

ただ、海外へ出せば全部解決するわけでもなかった。
日本車は世界中を走っていますが、実際にネットで買えている人は一部の国に偏っていました。

言語も違う。
使っているサービスも違う。
決済も物流も違う。

需要がないのではなく、需要まで商品を届ける導線ができていないケースが多いんです。

市村はさらに、ドバイへのコンテナ輸出にも挑戦する。

自動車部品のコンテナ輸出に取り組んでいた当時の市村幸士
自動車部品の海外輸出に取り組んでいた当時。コンテナを使った輸出にも挑戦した。

一度に大量の商品を動かせる一方、在庫、輸送期間、資金回収までの時間が膨らみ、1年を待たず撤退した。

Qコンテナ輸出の経験から、自動車流通についてどんなことを学びましたか?

市村

流通って、「売り手と買い手を見つければ終わり」ではないんですよ。

在庫がある。
物流がある。
決済がある。
資金の回収がある。
情報もある。

その全部がつながって、初めて流れる。

コンテナ輸出の経験で、流通は単なる「モノの移動」ではなく、情報・お金・物流まで含めた構造そのものなんだと実感しました。

海外で気づいた。「流通を変えるなら、ITが必要だ」

その後、市村は東南アジアへ渡り、現地の自動車部品市場を歩いた。

そこで目にしたのは、スマートフォンやSNSが普及している一方、自動車部品を買うためには実際に市場へ出向かなければならない光景だった。

商品はある。
欲しい人もいる。
それでも取引は簡単には成立しない。

配送、決済、商品情報、言語。
つなぐためのインフラが足りなかった。

Q自動車部品の海外流通を経験する中で、なぜITを使った仕組みづくりが必要だと考えるようになったのでしょうか?

市村

海外の現地では考え方が大きく変わりました。

それまでは、自分自身が商品を仕入れたり、売ったり、輸出したりして流通を作ろうとしていました。
でも、自分が頑張って商品を動かすだけでは限界がある。

「流通の仕組みそのものを作らないと変わらない」
と思うようになりました。

そこから物流DXやシステム開発、越境ECなど、IT側へ軸足を移していきました。

クルマを動かしていた人が、今度はクルマが流れる「仕組み」を作る側へ。
市村のキャリアにとって、大きな転換点だった。

そしてユーカーパックへ。「自分がずっと考えてきたことに近かった」

その後、自らITサービスの立ち上げにも挑戦した市村は、縁があってユーカーパックに参画する。

Qユーカーパックの仕組みを初めて見たとき、どのように感じましたか?

市村

「これ、自分が廃車事業を始めたときに考えたことと、根本は近いな」と思いました。

僕が最初にやったのは、ユーザーと解体業者を直接つなぐことでした。
ユーカーパックも対象は中古車ですが、「売りたい人」と「買いたい事業者」の間にある距離を、仕組みで縮めようとしている。
そこにすごく共感しました。

従来、一般のユーザーが自分のクルマを広い流通市場へ直接届けるのは簡単ではない。

ユーカーパックでは、一度取得した車両情報をデータ化し、多数の買取事業者が参加するオークションへ届ける。
ユーザーが何社もの買取店と個別にやり取りするのではなく、ユーカーパックが間に入りながら、多くの買い手へ車両情報を届ける仕組みになっている。

Q市村さんが考える、ユーカーパックの仕組みの本質はどこにありますか?

市村

1台のクルマの情報を整えて、それを必要とする多くの買い手へ届けられることだと思っています。

流通って、情報が届かなければ始まらないんです。
どれだけそのクルマを欲しい会社がいても、その会社が車の存在を知らなければ取引は成立しない。

逆に売る側も、「この会社なら欲しがってくれる」という相手を一社一社探すことはできません。

だから、車両の情報を整え、必要な買い手へ広く届ける。
僕が20代からいろいろな場所で感じてきた「接点がない」という問題に対して、テクノロジーで答えを出そうとしているのがユーカーパックだと思っています。

“感覚”から始めた経営者が、データを見る側へ

ユーカーパックへの参画後、市村はアプリを中心としたサービス改善に携わり、その後、マーケティング、データ分析、事業企画へと領域を広げてきた。

Q24歳で起業した当時と比べて、現在は事業の見方も変わりましたか?

市村

かなり変わりました。
24歳で会社を始めたときは、本当に感覚と行動力でしたから(笑)。

ホームページを作った。
電話が来た。
じゃあこの広告は効いているんだろう、と。
それでも事業はできました。

でもユーカーパックに入って、データで事業を見ることをかなり学びました。

どこからお客様が来たのか。
どこで離脱したのか。
どんなユーザーが売却まで進むのか。
どの施策によって何が変わったのか。
そして、その数字は本当に正しく計測されているのか。

Qデータでユーザー行動や事業を見ることは、自動車流通を捉えることにもつながるのでしょうか?

市村

つながります。

昔はクルマそのものがどこへ動いているかを見ていました。
今は、その前にある情報がどう動いているかも見るようになりました。

ユーザーがサービスを知る。
申し込む。
車両情報が作られる。
買い手側へ情報が届く。
入札される。
売買が成立する。
クルマが引き渡される。

全部、一つの流れなんです。
その中のどこかに詰まりがあれば、流通は滑らかにならない。
データを見るというのは、その詰まりを見つけるためでもあると思っています。

「未来事業ストラテジスト」とは

市村の肩書きは「未来事業ストラテジスト」。
聞き慣れない名前だ。

Q「未来事業ストラテジスト」とは、具体的にどのような役割なのでしょうか?

市村

未来を予言する人ではないです(笑)。

僕なりに言うと、「これからクルマがどう流通していくべきかを考えて、その仕組みを作っていく人」だと思っています。

自動車流通の現場を長く経験してきました。
そこに今は、ユーザー行動や取引、マーケティングなどのデータが加わっている。

これまでの現場経験だけで未来を考えるのでもなく、数字だけを見て考えるのでもない。

現場で見てきた流通の知見 × データ × テクノロジー。
この3つを組み合わせて、次の流通を考える。

それが僕にとっての「未来事業ストラテジスト」です。

これから変えたいのは、「売り方」よりも“流れ方”

自動車業界には、メーカー、ディーラー、買取会社、オークション、小売店、輸出事業者など、長い年月をかけてつくられてきた巨大な流通網がある。

一方で、インターネットやデータの活用によって、まだ変えられる部分も多いと市村は考えている。

Qこれからテクノロジーやデータの活用によって、自動車流通はどのように変わっていくと考えていますか?

市村

自動車って、すごく面白い業界なんです。
同じ一台のクルマでも、その後の流れ方はいくつもある。

中古車として国内で乗られるかもしれない。
海外へ行くかもしれない。
部品になるかもしれない。
資源になるかもしれない。

その選択肢の中から、より必要としているところへスムーズに届く状態が理想ですよね。

今までの自動車流通には、人が経験で判断してきた部分がたくさんあります。
それ自体に大きな価値があります。

一方で、情報をデータ化したり、今まで出会えなかった売り手と買い手をつないだり、AIを使って需要を見つけたりできる余地もある。
これからは単に「クルマをオンラインで売れる」という話ではなく、流通そのものがもっとデータで最適化される時代になると思っています。

Qユーカーパックで実現したい自動車流通の姿は、どのようなものですか?

市村

そうですね。

車を売る人にとって分かりやすく、負担が少ない。
買う側にも必要な情報がきちんと届く。
その結果、今までより効率よく取引が成立する。

僕は、どちらか一方だけが得をする仕組みは長く続かないと思っています。

売る人、買う人、そして流通全体にとって合理的になる仕組みを作る。
そこにユーカーパックが挑戦している意味があると思っています。

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経験談で終わらせない。これから積み上げたい、自動車流通の情報

このインタビューは、市村のキャリアを紹介するためだけの記事ではない。

今後、市村はユーカーパックのコンテンツを通じて、中古車流通の現場、ユーザーの売却体験、業界やテクノロジーの変化について継続的に情報を発信していく。

Q今後の監修や情報発信を通じて、自動車流通についてどんなことを伝えていきたいですか?

市村

自動車流通って、一般の方からすると見えにくい世界だと思うんです。

クルマを売ったあと、どこへ流れていくのか。
中古車流通では誰がどんな役割を担っているのか。
なぜ会社によって得意な車が違うのか。
テクノロジーによって、これから何が変わっていくのか。

そういう「流通の裏側」を、一般の方にも分かりやすく伝えていきたいと思っています。

そして僕自身も、昔の経験だけで語らないようにしたい。
市場もユーザーもテクノロジーも変わりますから。

現場の声を聞く。
データを見る。
実際に起きていることを確認する。
そのうえで、自分の経験と照らし合わせて発信する。
それは今後も大切にしたいですね。

クルマを売る人へ。「売却は、クルマの次の行き先を決める入口」

最後に、これからクルマを売ろうとしている人へ、市村にメッセージを聞いた。

Q20年以上、自動車流通に関わってきた立場から、これからクルマを売る方に伝えたいことはありますか?

市村

一般の方からすると、「クルマを売る」というのはそこで取引が終わる感覚だと思います。
でも流通側から見ると、そこがスタートなんです。

そのクルマを必要としている次の人へ流れていく。
場合によっては日本の反対側まで行くかもしれない。

僕は20年以上、この流れのいろいろな場所を見てきました。
だからこそ、「自分のクルマがどういう仕組みで次の買い手へ届いていくのか」にも少し興味を持ってもらえたらうれしいです。

仕組みを知ることで、クルマを売るという行為の見え方も少し変わると思います。

そして僕自身はこれからも、クルマを売る人と、それを必要としている人が、もっと自然につながる流通を作っていきたい。

整備士だった20歳の頃には、そんなことを考えるとは思っていませんでしたけど(笑)。
でも振り返ると、ずっと同じことをやっているんですよね。

「本来つながるべき人が、つながっていない」。その間をつなぐ。
これからも、そこをやっていきたいと思っています。

市村 幸士 プロフィール

市村幸士

市村 幸士(いちむら こうじ)

UcarPAC株式会社 未来事業ストラテジスト

自動車流通業界歴21年。

自動車専門学校卒業後、自動車整備士としてキャリアをスタート。自動車解体会社での営業を経て、24歳で自動車関連事業を起業。

廃車買取、自動車解体、中古自動車部品のEC販売、国内流通、海外販売、コンテナ輸出など、自動車流通の複数の工程を実務・経営の両面から経験。その後、海外事業、物流DX、ITサービス、越境ECの企画・開発へ領域を広げる。

ユーカーパック参画後はアプリを中心としたサービス改善を経て、現在はマーケティング、事業企画、プロダクト、データ活用などを通じ、自動車流通の新しい仕組みづくりに携わる。

整備・買取・解体・部品流通・国内外の自動車流通という現場経験と、IT・データ・事業開発の知見を組み合わせ、「クルマを売りたい人と必要としている人を、より効率的につなぐ流通」をテーマに活動。

ユーカーパックのコンテンツでは、自動車流通の仕組み、車売却におけるユーザー体験、国内外の中古車流通、テクノロジーによる流通の変化などについて、実務経験と一次情報をもとに企画・監修・情報発信を行っている。

自動車流通に関する知見について、取材・寄稿・登壇等のご相談にご興味をお持ちの方は、以下までお気軽にご連絡ください。


連絡先

広報担当:UcarPAC株式会社 事業推進室 広報担当
電話:03-5679-5840
Mail:info@ucarpac.co.jp

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